※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「機械式の「登山ウォッチ」3選!ただのモノ好きと呼ばれようと、私は機械式時計と山に登りたい。」の書き起こしです。
毎回テーマに沿って、おすすめの時計をご紹介するコーナー。本日は、一緒に山に登りたい機械式時計、選んでみました。登山用ウォッチというと、スントやらガーミンやらプロトレックやら。あとはGPSソーラーのGショックとかもですね。電池式の多機能ウォッチが選ばれることが多いかと思います。
ここで敢えて、機械式を選ぶ人というのは、かなりの少数派。ごく一部の、モノ好きのみかと。しかし!本来は登山においても、機械式が使われていたわけです。
目次
機能では、最新のデジタルウォッチにはかなわない。それは認めよう。けど、かつて困難な登山にチェレンジしてきた男たちの腕に着けられていたのは、デジタルじゃない!俺たちだ!そんな声が聞こえてきそうな高級機械式時計、3つほど選んでみました。それぞれの基本スペックと、登山にまつわるストーリー、併せてお伝えしていきます。
ファーブル・ルーバ レイダー ビバーク9000|世界初の機械式気圧計搭載モデル
ファーブル・ルーバのレイダー ビバーク9000。
ファーブル・ルーバは、スイス ル・ロックル発祥の時計ブランドです。今のブランド名でのスタートは1815年からとなりますが、その前身であった自社工房のスタートは1737年。そこを創業年とするのであれば、現存する時計ブランドの中では、ブランパンに次いで2番目に古いことになります。
フランスとの国境に近いル・ロックルで時計師をしていたファーブル親子によってその礎が築かれ、1820年頃より世界展開を開始。1850年代には、各国の万博において、数々の賞を受賞しています。
20世紀に入ってからは、スイス・クロノメーターという、国際的な精度規格に対応した時計も製作。1948年には、精度測定のための施設 ヌーシャルテル天文台より、最優秀賞に選ばれています。
そのファーブル・ルーバが、1962年、高度の限界へと挑む人々のために製作した時計が、このビバークというモデルです。機械式腕時計として、初となる高度と気圧の測定機能を有したこの時計は、瞬く間に世界中の冒険家に注目される存在になりました。どのくらいの注目モデルだったかというのは、当時使われたシーンからも明らかです。
1962年、発売と同年。パラシュートのワールドカップにおいて、スイスのナショナルチームのメンバーが装備。
1963年。グランドジョラス・ウィンパー峰北壁稜を人類初登攀した登山チームが装備。
同じく1963年。登山家ミシェル・ダルブレーが、初めてのアイガー単独登頂に成功した際に装備。
ミッシェル・ダルブレーはこの時、『現在自分がいる高度や差し迫った天気の変化を確実に知ることができた。』と語っています。
最新作のビバーク9000は、センターの赤い針と3時位置のインダイヤルで、高度および気圧を表示。最高高度9,000mまでの測定が可能になっています。9,000mというと、エベレストよりも上です。現地で、気圧がいつもより下がった時のことも考慮した上での9,000mなのでしょう。
その他の基本機能は、時分秒、日付、パワーインジケーター。パワーリザーブは65時間で、防水性能は30mです。
48mm径の大きなケースが、いかにもな登山装備品という感じでいいですね!チタン製なので、軽量なのもGoodです。価格は、メーカー定価で7,500スイスフラン。この記事作成時の日本円換算で、約85万円です。
ロレックス エクスプローラー1|人類初のエベレスト登頂
続いてのおすすめモデルはこちら。ロレックス エクスプローラー1。シンプルなデザインと丈夫な作りで、シーン問わず着用できる人気モデル。スーツスタイルで使っているよ!という方も、多いのではないでしょうか。
しかし、このエクスプローラー1、元を辿ると登山ウォッチなんですよね。しかもマジなやつです。エクスプローラー1の凄いところは、誕生までの間に、度重なる実地での精度および耐久テストが行われてきたことにあります。
防水性能を証明すべく、ドーバー海峡を泳いで渡るスイマーに着用されたり、逆に上空だとどうなんだ?ということで、飛行機に括りつけられてエベレスト上空を飛んだり。
また、陸上での振動やGへの耐久性チェックには、当時まだ舗装が甘い状態だったレースコースにおいて、レーシングカーによる着用テストが行われました。
そういった実地での厳しいテストの中で、ロレックスの時計は進化を続けます。そして、1953年。ロレックスは新境地を切り開くべく、登山隊の手に渡ることに。
ジョン・ハント卿率いる登山隊のメンバー、エドモント・ヒラリー卿とテンジン・ノルゲイ氏。彼らはロレックスの時計を携行し、見事人類初のエベレスト登頂を成し遂げました。度重なる厳しいテストの末での偉業達成。こうして誕生したのが、探検家の名を冠したエクスプローラー1、というわけです。
39mm径のステンレススチールケースにブラック文字盤。そこに納められた、日付を持たない3針のみの機械式ムーブメント。クールな顔とは裏腹に、水にも強く、風にも強く、極寒の登山においても正確に時を刻むタフな奴。現代の登山シーンでも、頼れること間違いなしです!
価格は、メーカー定価で¥687,500。実勢価格は、これよりも高く、85万円前後です。
ボールウォッチ エンジニア ハイドロカーボン セラミックXV|鉄道時計時代に培われた耐候性
ラストはこちら。ボールウォッチ エンジニア ハイドロカーボン セラミックXV。
ボールウォッチは、1918年にアメリカで創業されたブランドです。鉄道用の時計メーカーとして活躍した後、現在はアウトドアウォッチをメインに展開しています。
ボールウォッチの時計の魅力は、非常に丈夫でタフであるということ。耐磁性、耐衝撃性、耐低温性、防水性など、タフウォッチとしての拘りが詰まった作品が売りです。鉄道で使われていた背景から、野ざらし状態や、強い振動に対して耐えうるためのノウハウを持っており、それが現代のアウトドアシーンでの使用にも活かされているわけですね。
さて、見るからに丈夫そうなこの時計。42mm径のステンレススチールケースに備えられるのは、傷や腐食に強いセラミック製の逆回転防止ベゼル。リューズ回りには、ロック付きのガードが付いており、万一ぶつけてしまった際にも、誤作動や故障が起きにくいよう、工夫されています。厚いラグ幅にも、安心感がありますね。
ハイドロカーボンは、防水ウォッチのシリーズ、つまりダイバーズウォッチなのですが、このセラミックXVは、アメリカ人で初めてエベレスト登頂を果たした登山家ジム・ホイカッター氏の偉業を称えて登場したモデルです。
セラミックXVというモデル名は、エベレストのコードネームであるピークXVから。時計裏面には、登山家ジム・ホイカッター氏のレリーフが刻まれています。現行モデルではないため、現在は中古でしか手に入りませんが、20万円前後から探すことが可能です。これだけのスペックで、この価格というのも、アメリカンウォッチらしい魅力だと思います。
鉄道史と共に歩んだタフウォッチ。そのノウハウから誕生した、タフな機械式登山ウォッチ。いかがでしょうか。
まとめ
以上、一緒に山に登りたい機械式時計3本、ご紹介してきました。それぞれにストーリーがあって、楽しんでいただけたかと思います。
冒頭でもお伝えした通り、現実的に登山用として選ばれるのは、電池式の多機能デジタルウォッチだと思います。しかし、今回ご紹介した3本は、どれも高級時計としての高級感を保持しつつ、耐久性が高いモデルたち。カジュアルウォッチやデジタルウォッチでは出せない、固有の魅力があるものだと思います。
ぜひ、機械式登山ウォッチの魅力、見つめなおしてみてくださいね!