毎週1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくコーナー。第二回目の今日は、『針』について。
針の役割を知らないよという方はいないかと思いますが、実は多種多様な形状が存在し、非常に面白いものなんです。今回は、どんな形状の針があるのか、各ブランドの時計で比較しながら、解説していきたいと思います。
基礎といいつつ、毎回ディープな世界の入り口くらいまでは誘っているのではないかと思いますが、今回も腕時計の楽しみ方を一つでも増やしていただけたら、嬉しいです。
目次
- 時計の針とは?
- 形状は大まかに13タイプ
- バータイプ
- ペンシルタイプ
- バトンタイプ
- ローザンジュタイプ
- リーフタイプ
- ドルフィンタイプ
- アルファタイプ
- スペードタイプ、ブロードアロータイプ、コブラタイプ
- メルセデス針、イカ針、ブレゲ針
- ブレゲ針
- 針の誕生背景には謎が多い
- 多種多様な針を用いてきたヴァシュロン・コンスタンタン
- 針にも実用性を求めるロレックス
- まとめ
時計の針とは?
さて、針とはなにか、、、は、あえて説明する必要がないかと思いますが、時計の時間や分、そして秒を指し示すためのものですね。
画像左はロレックスのデイトジャストという時計。そして右はグランドセイコーのヘリテージコレクションです。
どちらも時分秒、そして日付の表示機能を持つスタンダードモデル。文字盤のカラーはブルー。目盛部分、インデックスと言いますが、その形状も同じバータイプです。
と、共通点が多いこの2本ですが、決定的に異なるのは、針の形状です。言われてみると、あーなるほど!って思いませんか?ロレックスの方は、バータイプと呼ばれる形状。グランドセイコーの方は、ドルフィンタイプと呼ばれる形状です。
個人的な感想ですが、この2本の場合、ロレックスの方が力強い印象。グランドセイコーの方は、クラシックな印象を受けます。針の形状・デザインは、時計顔の一部であり、いわば表情のようなものです。この他にも非常に多くのバリエーションが存在しますので、まずはざっとご紹介していきますね。
形状は大まかに13タイプ
針形状の種類、大まかに13タイプあります。
たくさんありますね!これ全部覚えるのかー。と、思った時計初心者の方、大丈夫です。どのモデルにどの針が使われているかとなると、わかる人は極めて少数。時計上級者の方でも、覚えている人は少ないです。笑
なので、名前がどうこうというよりは、いろいろな形状があるということを楽しめるようになっていただければOKかなと思います。
バータイプ
では、一つずつ、それぞれの形状について説明していきます。各ブランドから代表的な時計をピックアップして、見ていきましょう。まずはバータイプ。ストレートタイプとも言います。細長い棒形状の針ですね。
多くの種類が存在する中で、もっともシンプルなデザインの針です。
画像左から、ボームの41MMムーンフェイズ。シャネルのJ12。そして、先ほど登場したロレックスのデイトジャスト。バータイプは、シンプルなデザインの時計と相性がよく、最小限のデザインで時間を読みやすく表示することに長けています。
ペンシルタイプ
続いて、ペンシルタイプ。
画像左は、ヴァシュロン・コンスタンタンのパトリモニーというモデル。画像右は、ユンハンスのマックスビル・メガというモデルです。
どちらも無駄のないシンプルなラウンドウォッチ。一瞬見ただけだと、極細のバータイプ針を使っているように見えますが、よく見ると先端が尖った形状になっています。この形が鉛筆に似ていることから、ペンシル針と呼ばれています。
シンプルな時計ばかりかというと、そんなことはなく。
こちらは、ウブロのビッグバン・ウニコ。
2000年代に登場し、瞬く間に世界のスターに愛される存在にまで上り詰めたこのモデル。エネルギッシュなイメージにふさわしく、太く力強いペンシルタイプの針が使われています。
ペンシル針は、先端が尖っていることで可読性が高く、バータイプでは読みにくくなってしまう太さにまでサイズアップ出来るのが強みですね。
細いものから、太いものまで。ドレスウォッチから、デカ厚スポーツウォッチまで。非常に汎用性高く使われています。
ちなみに、ロレックスの超人気モデル・デイトナもペンシル針。
絶妙なサイズ感で、他の表示を邪魔することなく、時間を読みやすく指示しています。
オメガのスピードマスター・ムーンウォッチ。それからパテック・フィリップのクロノグラフ5172もペンシル針です。同じペンシル針でも、太さや尖らせる角度、カラーリングなど、それぞれに工夫が見られて、非常に面白いですよね。
バトンタイプ
続いて、ペンシルタイプとよく似ているのが、こちらのバトンタイプ。
画像は、カルティエのサントス・デュモンです。ペンシルタイプとの違いは、胴部分の形状。ストレートなペンシルに対して、根元から先端にかけて太くなっていくのが、こちらのバトンタイプです。
ペンシルやバーと比べると、飾り気のあるデザインですよね。カルティエの特徴的なローマ数字のデザインと、非常によくあっていると思います。
ローザンジュタイプ
そして、バトンタイプをさらに変形させたようなデザインなのが、ローザンジュタイプです。ローザンジュは、フランス語で菱形を意味し、文字通り菱形を引き延ばしたような形状になっています。画像は、カルティエのミス・パシャ。このローザンジュタイプと先ほどのバトンタイプは、その形状が西洋の刀剣にも似ていることから、ソード針と呼ばれることもあります。言われてみると、たしかにソードっぽい。
リーフタイプ
続いては、リーフタイプ。その名の通り、葉っぱのような形状の針です。ローザンジュよりも曲線的で、色気のあるデザインですね。
画像は左がIWCのポルトギーゼ。右は、セイコーのプレザージュ。時計という機械の中に、リーフというデザインを入れることで、有機的で繊細な印象を持たせてくれます。
ドルフィンタイプ
続いて、ドルフィンタイプ。グランドセイコーやパテック・フィリップのカラトラバなど、クラシックなラウンドウォッチに使われています。
根元から先端に向かって、鋭い刃物のごとく絞り込まれた形状です。
アルファタイプ
続いて、アルファタイプ。ソード型に近い形状ですが、根元がグッとシェイプされています。例えるなら、忍者のクナイのようなデザインです。
画像は、どちらもA.ランゲ&ゾーネ。左がランゲ1。右は新作のオデュッセウスです。根元のシェイプから、急な広がりを見せるこの形状。太めのペンシルタイプの様な存在感を出しながらも、先端に向かってまた細くなっていく。シンプルな文字盤を使った時計に、高貴な印象を持たせてくれるデザインです。
スペードタイプ、ブロードアロータイプ、コブラタイプ
続いては、インパクト強めなこの3つ。左がスペードタイプ、ブロードアロータイプ、コブラタイプの針を使用したモデル。
どれも短針の先端に特徴を持たせたデザインです。強い個性と共に、アンティークウォッチのような雰囲気も感じさせてくれますね。存在感があって、ぱっと見で大体の時間を読むのにも適していそう。
メルセデス針、イカ針、ブレゲ針
続いて、各ブランドのアイデンティティにもなっているこれらの針。
画像左は、ロレックスが極地での高い視認性を確保するために用いているメルセデス針。ドット型のインデックスとの組み合わせは、見やすくもあり、ポップな印象も作り出しています。
真ん中は、チューダー ブラックベイに使用されているイカ針。こちらもドットインデックスと合わせて視認性が高い形状。イカに似ていることからそう呼ばれています。
右は、ルイ・ブレゲが1785年にデザインしたブレゲ針です。見やすくするため、針の先端を大きくしよう。でもその分重くなってムーブメントに負担がかかってしまうので、大きくした部分をくり抜いて軽量化しよう。ということで生まれた形がこれです。
効率化とデザイン性の両立で、非常にエレガントな印象を与える点、さすが貴族御用達のブランドですね。
針の誕生背景には謎が多い
ざっと全種類紹介してみましたが、いかがでしょう。
お好みの針はありましたか?どれもそれぞれに個性があって面白いですよね!小さな部品ですが、十分に個性を発揮できるものであること、お分かりいただけたかと思います。
ちなみに、針形状のそれぞれの意味についても知りたいなと思って、針の歴史や誕生背景についても調べてみたんですが、、、よくわかりませんでした。ブレゲ針くらいルーツが分かりやすいものというのは、今回は情報が見つかりませんでしたね。
なので、このあたりの詳細は、また別の機会にお伝えするとして、今回はなんとなくブランドごとに異なる針への意味付けを感じていただければいいのかなと思います。
締めとして最後に2つほどお見せしますね。
多種多様な針を用いてきたヴァシュロン・コンスタンタン
まずは、世界最古の時計ブランドのひとつ、ヴァシュロン・コンスタンタン。
18世紀後半ブランド創業初期~19世紀にかけては、このように装飾性の高いものから始まっています。
20世紀に入って、懐中時計から腕時計が主流になってからも、ブレゲ針、スペード針のように、やはり装飾性の高いものの使用を継続。
かと思うと、20世紀中盤には急にシンプルなものを追加。時代的にデザインの潮流が変わったことにも起因しますが、細いペンシルタイプやバータイプが使われるようになります。
このように、ヴァシュロン・コンスタンタンは、多種多様な針デザインを使ってきた歴史があり、モダナイズされてはいるものの、現在もいろいろな針を使用してます。
自由度の高いデザインで、ブランドらしさを表現し続けていることが、感じられるかと思います。
針にも実用性を求めるロレックス
片や、ロレックスのように実用性を追い続けているブランドもあります。こちらは、ヨットマスター2という時計。上は2016年以前の製造年式。下は2017年以降の新しい年式。
同じモデルですが、年式で針が違うものになっていますよね。視認性向上のために行われた仕様変更です。
こちらの2つも。同じ型番の同じモデル。エクスプローラー1 Ref.214270ですが、やはり製造年式だけが違います。
針の違いわかるでしょうか。よーく見ると、2016年以降の年式の方が、太いものに変更されています。こうした非常に細かい点へのこだわり。ロレックスがいかに実用性能を強く追求しているブランドか、おわかりいただけるかと思います。
まとめ
以上、本日は腕時計の基礎知識『針』について、お届けいたしました。
針の種類、本当にたくさんありましたよね!過去どんな針が使われてきたか、また時間を指す以外にどんな役割を担わせているのか、ブランドによって異なる針への意味付けも、非常に興味深いものがあったかと思います。
皆さんもぜひ、いろいろなブランドの針、調べてみてくださいね!