ロレックスを着用する以上、数年に一度は必ず必要となるオーバーホールという定期メンテナンス。これを行える修理店は数多く存在しますが、当然のごとくロレックスのメーカー本体でも受け付けてもらえます。では、どちらに依頼するのが正解なのか。メリットとデメリットをまとめてみました。
目次
- ロレックスのオーバーホールはなぜ必要なのか
- メーカー修理と時計修理専門店の違いとは
- メーカー修理のメリットデメリット
- 時計修理専門店のメリットデメリット
- あえてメーカー修理を避けたほうがいい場合もある
- まとめ
ロレックスのオーバーホールはなぜ必要なのか
オーバーホールとは、機械一度分解して清掃修理を行い、再び元の状態に組み上げる総合的なメンテナンスです。
時計に限らず、工場ラインのマシンや、車やバイクのエンジンなど、機械仕掛けで動くものであれば、必ずと言っていいほど定期的なオーバーホールが必要になります。
ロレックスのような機械式時計の場合、これをきちんと行わないと、時計本来のパフォーマンスが発揮されず、場合によっては深刻な故障にも繋がってしまいます。
その主たる原因は、ムーブメント内部の潤滑油の劣化。潤滑油という名前でありながらも、劣化してしまうと固着して逆に動きを妨げる悪因となってしまいます。
特に不具合が見当たらなくとも、数年に一度のオーバーホールが必要となる所以は、この劣化した潤滑油を清掃除去し、新しいものを塗布する必要があるからに他なりません。
実際のオーバーホールでどんなことが行われるのか、修理店への潜入レポートはこちら
→ オーバーホール写真レポート|ロレックス エクスプローラー1をOHに出してみた
メーカー修理と時計修理専門店の違いとは
さて、このオーバーホールですが、ロレックスの場合構造がシンプルであるため、取扱業者が非常に多く、お住いの地域でも必ずと言っていいほど店舗が存在します。
当然ながら、ロレックスのメーカー本体でも取り扱っているため、オーバーホールを検討の際は、『メーカー修理』に依頼するのか、『近所の時計修理店』に依頼するのか、という二択を迫られることとなります。
修理の受け付け窓口とオーバーホール
上のフローチャートは、受け付けからオーバーホールが実施されるまでの流れを表したものです。
メーカー修理の場合窓口は2つ。『正規販売店』と『正規サービスセンター』です。意外にもwebでの受け付けは行なっておりません。どちらで受け付けた場合も、その後はメーカーの修理工場に運び込まれ、そこでオーバーホールが行われます。
一方、それ以外の時修理専門店の窓口は3つ。『修理店の店舗』『修理店のホームページ』そして『修理受付代理店』です。
修理受付代理店は、腕時計を “売っているお店” であることが多いため、お手持ちのロレックスを購入したお店に持ち込んだ場合は、その後提携の修理店にバトンタッチされ、そこでオーバーホールが行われるという流れになっています。
メーカー修理のメリットデメリット
では、実際にオーバーホールを行う場合、メーカー修理に出した場合と、それ以外の時計修理店に出した場合とで、どのようなメリットデメリットがあるのか、確認していきましょう。
メリット|メーカー修理
メーカー修理に依頼するメリットを一言で表すなら『安心感』です。製品づくりに努力している企業なので、当然アフターサービスにも力を入れており、高い専門スキルを持った技術者が多数在籍しています。
パーツも本国スイスから正規品を輸入して用いるため、互換性の心配がなく、オーバーホールに出したはずなのに調子が悪い…というトラブルに見舞われる心配がありません。
デメリット|メーカー修理
安心安全なメーカー修理にもデメリットはあります。それは『料金』と『納期』です。
まず料金ですが、基本料金だけでも時計修理店の5〜8割増と高額です。
これは要る、これは要らない、など料金面でのカスタマイズが不可であるため、メーカー側で必要と判断したメンテナンスを全て承諾しないと、先に進めません。そのため、総額では2.0〜2.5倍の金額になることも。
また、納期が長いことも難点。スイスからの部品取り寄せに時間がかかることが多く、さらに順番待ちも多いため、1ヶ月かかるのは普通。モデルとタイミングによっては2ヶ月以上かかることあります。
時計修理専門店のメリットデメリット
片や、街の時計修理屋さんですが、Googleで “ロレックス オーバーホール 店” と検索してみると、35万件以上がヒットします。
ほとんどが実際にオーバーホールを行うわけではない、いわゆる “窓口店舗” かと思いますが、どの地域でもアクセスできるエリア内にはあるという点が嬉しいですね。
メリットとデメリットを見てみましょう。
メリット|時計修理専門店
非正規の時計修理店でロレックスのオーバーホールを依頼する場合のメリットは、『料金』と『納期』の2点。これは先ほどお伝えしたメーカー修理でデメリットとなっていた2点です。
料金はメーカー修理の半分程度とお手頃。納期も早ければ2週間。部品の取り寄せが必要な場合でも、3週間〜4週間ほどで仕上がります。
また、メーカーと異なり、オーバーホール依頼時に料金のカスタマイズが可能な点もGood。部品も正規品か他社製造の代替品かのチョイス可能で、直す部分と直さなくて良い部分など、細かい相談ができます。
デメリット|時計修理専門店
非正規の時計修理店のデメリットは、クオリティへの不安。この一点に尽きます。
メーカー正規と異なり、修理工の認定試験などが存在しないため、経験値が不明な修理工の手に委ねることとなります。オペレーションもメーカーほど丁寧であることは少なく、納期までの間は寂しい腕元を見ながら、少しばかりの不安を抱いて待つこととなります。
とは言え、このデメリットは、修理工の経験と実績を確認し、進行状況の報告に対応してくれる修理店を選ぶことで回避できますので、あまりネガティブに捉える必要はないかもしれませんね。
あえてメーカー修理を避けたほうがいい場合もある
メーカー修理でのオーバーホールには、伝えておきたい大事な デメリット がもう一点あります。
意外と知られていないことですが、実は日本ロレックスでは古いモデルのオーバーホールは、ごく一部のモデルしか行なっておらず、60年代や70年代のアンティークモデルはほとんどが断られてしまいます。
80年代以降のモデル(ムーブメントcal.1575系以降)は、基本的にはメンテナンス可能ですが、これまた問題ありで、オリジナル状態に価値があるとされるヴィンテージモデルを、見事に新しい代替パーツに取り替えてくれます。
文字盤、針、ベゼル、風防など、オリジナルの状態をそのまま綺麗に保ちたい場合は、メーカー修理でのオーバーホールをあえて避けるという選択肢もあるのです。
まとめ
メーカー修理か、それ以外の時計修理専門店か。どちらも一長一短ありますので、価値観やご予算で選択してみてはいかがでしょうか。
大まかには、安心感重視するのであればメーカー修理。料金と納期を重視するのであれば時計修理店。といったところです。
お持ちのモデルによっては、メーカー修理が対応していない場合もありますので、その際は信頼できるお店を探す必要があります。
ホームページを覗いて見て、実績数と事例を定期的に更新しているお店であれば、修理作業への安心感は持てます。その他の対応が良いかどうかも選ぶ基準になるため、実際に問い合わせて確認することをおすすめします。
最後に、ロレックスのオーバーホール基本料金を調査しましたので、以下参考まで。(2018年3月調査:大樹、オロロジャイオ、タムタイム、カナルクラブ、ハナワ時計店、ウォッチホスピタルの6店にて調査)
メーカー | 時計修理店 | |
3針カレンダーなし | ¥43,000〜 | ¥20,000〜 |
カレンダーあり | ¥44,000〜 | ¥21,000〜 |
デイトナ | ¥60,000〜 | ¥32,400〜 |
デイデイト | ¥55,000〜 | ¥25,000〜 |
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上記補足)
3針カレンダーなし:
エクスプローラー1、オイスターパーペチュアルなど
カレンダーあり:
サブマリーナデイト、デイトジャストなど